序盤でアーサーの発作が出たときに出した障害カードの折り目具合が、この映画もう好きって掴まれてしまった。
発作が出て焦って自分でカードをぐちゃってしまったとか、差し出しても「意味わかんね」とぐちゃ捨てされたのかもとか、文面とかラミネートとかお役所仕事っぽいカードだな~~!とか・・・背景をたくさん思い起こされるアイテムですごい良かった。
この映画は否定と希望と崩壊とその先が描かれていた。
ずーっと不穏。
障害を抱えているアーサー。
家には介護している母親。
リストラされる仕事。
の中に、いい感じの女性。
それぞれが別個で発生していて、でも全部背負ってるのがアーサーひとりでこの顛末がどうあのジョーカーに帰結するのか不謹慎ながら夢中になって楽しめた。
アーサーを通して、いちゴッサム住民のミクロ視点を追体験しているような感覚にもなった。
映画を観ていて途中、『無敵の人』という言葉がよぎってしまった。
最近は聞かなくなったけど、理解されにくい障害(持病や家庭環境など)で生きづらさを感じている人たち。
アーサーの持病に加え、母親の精神障害、幼少期に受けた虐待、格差社会の底辺で生活している状況は不幸のバーゲンセールなんだけど、決して特別なことじゃないのがつらい。
アーサーの求めていることは認められたい、話を聞いてもらいたいってことで、カウンセラーに話を聞いてない!と怒ってから気づかされたけども、たしかに誰も彼もアーサーと会話をしていない。
『告げる』ことが主で、アーサーの言い分は文字通り聞く耳を持ってない。
仕事もない、見た目も不気味で言動も怪しい・・・防衛本能というと過剰だけど、やっかいものには深入りしたくないのもまた正直な気持ちあるよな、、と難しさを感じた。
一昨日の台風で避難所がホームレスを追い出した件を思い出す。
種類は違えど、同じくらい過酷な生きづらさを抱えた人たちはたくさんいて、だから警察まで入れて警戒するのは当然なんだと思う。
この映画は社会派!とも言えるけど、内容一つ一つ賛同やクレームをつけるのは野暮な気がする。
ゴッサムの福祉削減で↓を思い出したのはまああるんだけども。
ただ『笑い者にする笑い』というのはそろそろ考え直してもいい頃だと思う。
ハゲとかデブとかモテないとか、昔からのカテゴリでその枠にいる人を笑うってことは全然やっているけど、笑われてる人は笑えるのか?ということを考えると・・・。
ポリコレにがんじがらめになってしまうので、決して線引きできないことなんだけど、ここで振り返って考えたりすることが一歩世の中を進めると思う。
・・・・・・
この映画は印象深いシーンがいくつかあって、これからも忘れることはないんだともうわかる。
「たしかアーサーよね?」、「優しくしてくれたのは君だけだったね」、デモの中で復活するジョーカー、真っ白な病院で陽の光に包まれる血の足跡、・・・。
https://www.imdb.com/title/tt7286456/mediaviewer/rm2020643841
映画を観た帰り道、人を思いやって優しくしなきゃなとシンプルなことを考えていた。
ジョーカー、苦しさの生々しさや異常なんだけどすべてを受け入れて完成した『ジョーカー』すんごいかっこよかった。フィクションの中に生を感じてキャラクターの深みがすごい。本気の実写映画素晴らしい。
— たくわん (@kzmtkwn) 2019年10月13日
おわり。