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『アンチマン』と『タクシードライバー』

『アンチマン』という漫画。

comic-action.com

 

父親の介護をしながら正社員として働く中年喪男の話。ヒーローに憧れながら、鬱屈した毎日を過ごし、解消されない性欲を余している。現実と妄想が入り混じった果てに・・という話。

この漫画はかなりわかりやすくて、ネットでは見るミソオジさんの生活を描いているから、本当に日本のどこかに存在しているようなリアリティがある。ベタっちゃベタだけどベタであればなおさら同じような人もいるだろう。

私的には、やたら女性につっかかったり、関係ないのに悪態をついたり、いわゆる女体好きの女嫌いとする人間が主役なことに、「ここまで来たか」という気持ちになった。(昔から文学や映画なりであったんだろうけど、自分が触れることがなかった)

読み進めるごとに気が重くなって、不穏が重なって、爆発して、理不尽だとは思う。共感はしないけど、産まれた性別や生きてる環境や運やら何やらで自分もこうなってたのかもしれないし、主人公一人が悪いとも思わない。(ぶつかりは絶対だめ)

 

私は女性なので、意図しない部分で勝手に盛り上がってることがあるなんてすごく不安だし怖い。自分自身だけじゃなく、友達や知らない若い子に対しても危険を覚える。だけどこれはフィクションとして線を引かないといけない。

実際に電車内で「幸せそうな女性だから」刺された事件もあったし、介護福祉士へのセクハラもあるし、駅を歩いているだけで背後から激しくぶつかられることも起こっている。フィクションとは・・。

 

タクシードライバーを観てから読むと、確かに現実と空想が混じった日常と、最後のヒーロー部分は同じだった。大きく違うところとしては、アンチマンは日本の現代人を描写しているのでネトッとしたカビくささと生活上の紙一重感があるように思う。

 

 

アンチマンが話題になっていた時、タクシードライバーだ、と言う人がいたので初めて観た。

70年代の映画で、ベトナム戦争帰りの男性が主役。不眠症を患っていてタクシードライバーになる。汚い街に天使のように美しい女性が現れ惹かれる。アタックの甲斐あってデートに連れ出すけど行先はポルノ映画。愛想を尽かされ嫌われた挙句、彼女に「殺してやる」と叫んでしまう。一人荒んでいくトラヴィスは売春している少女と出会い、また狂気は加速して・・という内容。一言で表せない・・。

 

生きづらさ、と言っても戦争帰りで病んだ人と、アンチマンのような腐り人生は並列にできないしでなんとも比較が難しい。しかもタクシードライバーはどういう思考回路で感情も不明で、人となりを私の中で定めることができなかった。この映画は顛末を見届けることしかできなかった。

 

私は共感が好きだけど、タクシードライバーには共感できるところが何一つなく、面白くなかった。だけど、作中にずっと流れる「何か起きる」緊張が張っていて続きが気になる不思議な作品だった。ロバートデニーロのぬぼっとした雰囲気がハマっていた。

 

落ち込んだり、むかついたり、悪いことが起こった時の発散方法として私の中に暴力は存在していない。心が爆発した先に「殺してやろう」だとか、一矢報いたいと思わない。だから、トラヴィスが病んだ結果暴力にたどり着いたのか、素質があったのか、両方なのかはわからないけど、「そういうものなのか?」という気持ちで観ていた。『ファイトクラブ』のように、抑圧された男性たちが、大っぴらに暴力を振るえる解放感は「そうだろうな~!」となったけど。

アンチマンで描かれた主人公の何もしなさの方がよくわかる。でも外野(視聴者)は見えてるものからしか判断できないから、田山も、トラヴィスも、視聴者の中にも共通する感情があったのかもしれない。私にはなかったけれども。

 

男の人は共感することが少ない。する必要がないか、できないのか、だからタクシードライバーは「感じる人は勝手に感じる」作りなように思った。背中を見せるというか、言語を用いない表現をしているような。だから素質のない私にはわからなかったのかな?と。。他の人のレビューでは賛の声が多いように見えたので、わかる人にはわかるんだろう。