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【映画】『そこのみにて光輝く』感想

名作では。アマプラにて。

 

概要を書こうと思ったけど難しくて書けない。貧乏だとか娼婦だとか仮釈とか言葉を使えば説明できるけど、属性にしてしまうとチープな表現になる気がして色んな要素がぐにゃぐにゃグラデーションして混ざり合ってる作品だった。それが人間とキャラクターの違いのような気がして、彼らの生をすごく感じた。

 

タツオとタクジとチナツ。

事件のショックから逃げ出してパチンコと酒飲むタバコ吸うくらいしかしなくて寡黙だから何考えてるのかもわからないタツオ。荒れた生活の割にはこざっぱりしてるというか、”荒れた綾野剛”みたいで最初は苦手だった。だけど、仕事の回想シーンでは身なりもきれいだし、元々きれいな人もしくは荒れ生活が短いのかもしれない。髪の毛のセットは常にかっこよかった。

底抜けに明るくて、バカで声でかくて食べ方も汚いタクジ。タツオとの子弟みたいな関係がすごく可愛くて、出会って間もないのにわかりあえてるのすごい。結構なケンカをしても何だかんだ元に戻ってあっけらかんとしてるの、私にはできない所業でああいう軽さはすごい強みだからバカっぽく見えても羨ましいと思った。

昔刺した理由を本人は覚えてないと言うけど、きっと家族に関することを言われたのかなと思った。鬱々とした家族の中で「知らんけど」とでも言いたげな無責任さで渡ってきたように見えたけど、家族が大事で、自分も大事にしたくて凶行を繰り返してしまったタクジを悪く思えなくて・・・とにかく環境が悪いんだ・・・という結論しかなかった。

キッと見つめる顔が幼いのに苦労しかしてないチナツ。いつもすぐ脱げるワンピースを着ていて、出てきたときは仕事のにおいを感じさせられた。風俗業は私にとって尊敬するべき仕事のひとつで、チナツがしたいからその仕事をしているのかどうかはかり知れない部分があったけど「普通の仕事ができない」と漏らしたときには、何とも言えず「うん・・・」という気持ちになった。例えば正社員で就職しました、結婚して家建てました、なんていう一般的に言う幸せをチナツに当てはめてもチナツは絶対に幸せにならない。寄り添い合って、たくましく誠実に生きて欲しいとすごく思った。

 

そこのみにて光り輝く

映画を観ていて、タイトルはどういう意味なんだろうと何回思ったことか。終盤になる頃になんとなくわかったような気がする。

チナツとタクジの家庭環境は最悪中の最悪で、近所(職場)の人は「出来損ない」と揶揄してくる腐った人たちで、自分たちだけでは未来を変えるなんて到底できなかった。タツオと出会って恋をしたり、仕事のアテを見つけたりして「これで変われるかもしれない」とやっと思えたはず。3人で生活を始めるためには、不倫相手と縁を切って、今の職場を退職しないといけない。結果、すんなり縁は切れないし、めちゃめちゃにキレて傷害事件を起こしてしまってご破算。思い描いた明るい未来はもっと遠くに行ってしまったと当人たちは思っただろう。

だけど、それまでの環境はそれほどまでしないと切れなかった世界で、少なくとも不倫相手との縁は切れたし、タケジは刑期を終えれば出所する。まったく救われないバッドエンドに見えるけど、前よりかは何歩も前に進めてるエンドだと私は感じた。だから諦めさえしなければ地獄みたいな生活をやめることができるんだと思える、救いのある終わり方だったと私は感じた。

だから、幸せになる方法も、かかる時間も普通の人じゃ想像もできない内容だとしても、本人たちの「そこのみ」が表現された映画だったのかなーと思った。

 

 

タツオとチナツが海でお互い泳ぎながら近づくシーン。恋愛の高揚感が伝わってきてどきどきして良かった。ラブストーリーよりもとにかくタケジが好きになっちゃう映画。ありえないぐらい歯が汚くてびっくりできます。

 

そこのみにて光輝く

そこのみにて光輝く

  • 発売日: 2015/02/14
  • メディア: Prime Video